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アキレスと亀

アキレスと亀  アキレスと亀

 

 前作「監督ばんざい」でひょっとするともう映画に飽きちゃったから、撮るの止めちゃうんじゃないかと不安にさせてくれた北野武 。本作で「Dolls」以前の描き方を復活させてくれたのは嬉しかったですね。この人の場合、一度やったことはまず手をつけたがらないんでしょうけれど、少なくとも「Dolls」まではある確立した映画話法みたいなものがあったわけです。

 

 しかし「座頭市」 で突然ガラリと作風が変わり、以後の3作は描き方を模索していたんでしょうか。ただもちろんそれらも“肥やし”にしつつ、全体としては以前のあの北野作品を思わせる1本に仕上がっています。1ファンとしては大満足。

 

 さてお話しはいたって丁寧にある“たわけ”の生涯を描いていきます。裕福な家庭に生まれたけれど、途中で破産、天涯孤独となり、悲惨な人生を歩む主人公。それも甘やかされた幼少期のお陰で、一向に社会性がなくただ絵を描くことしか出来ないという有様。もうどうしようもない無能力者で、頼みの綱の芸術にも才能が一向に開花しない。

 

 じゃあ彼が不幸な人物として描かれているか、というと決してそんなことはない。ここが物語のキモで、たとえはた目からは不幸に見える人間でも、実に幸せな一生を送っているケースもある。主人公は本当にたわけなんだけど、見つめる視線は温かく優しい。これは今までの北野作品にはないタッチかもしれないけれど、良かったですねぇ。

 

 また映画監督として本気モードがうかがえるのが、主人公の幼少期の描写。映し出される風景は美しいだけでなく、正確で精緻な時代再現。これに匹敵するのは「山のあなた 徳市の恋」くらいでしょうか。とにかくため息が出てしまうくらい、バスにしても家々にしても自然でした。更に出ている役者達も北野映画ですから、ちゃんと染まっていくんですねぇ。樋口可南子にしても麻生久美子にしても美人女優なのに、“普通の女”に化けてしまっている。男優の面々は力量炸裂で、大杉漣、中尾彬も良かったけれど、伊武雅刀の悪役ぶりは見事。出ていないんじゃないかと思っていた寺島進はファンサービスでしょうか。

 

 コーエン兄弟とかジム・ジャームッシュのように、ついつい観に行ってしまうお気に入りの映画作家、北野武 。もう撮らないんじゃないかと思っていただけに嬉しかったなぁ。

 

現在(10/3/2008)公開中  
オススメ★★★★☆

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 北野武監督の青春スポ根もの「あの夏、いちばん静かな海」 はサーフィンをする若者の寡黙な恋愛映画だったけれど、これはボクシングを題材に二人の友情物語を、北野武風に味つけした青春映画。監督の実体験からなのか、ボクシングの描写は生々しい。トレーニングだけでなく、せこいテクニックに至るまで、実際にやった人間にしか分からないようなことまで映画の中に盛り込まれている。そしてボクシングの選手として徹底的に鍛えられるのが主演の安藤政信で、ロバート・デ・ニーロ(「レイジング・ブル」)とかダニエル・デイ・ルイス(「ボクサー」 )ほどの“執念の変貌”はないものの、ちゃんと新人ボクサーに見えるのはさすが。

 

 北野映画のこだわりは他とはちょっと違うのか魅力なのです。ボクシング映画の側面と同時にヤクザ映画でもあって、そっちのパートは金子賢が担っている。兄貴肌で極道世界でも出世していくんだけど・・・。ラストの自転車のシーンは良いんだよなぁ。更にこの作品から今までとは違った“見やすさ”が北野映画に加わったと思うんだけど気のせいか。
オススメ★★★★☆

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