クィーン 4/19


 この作品でアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ミレン。彼女のそっくりさんぶりには本当に驚かされれる一本で、それは“ブレア首相”のマイケル・シーンにも言えること。そして内容も可能な限り事実に忠実に描こうとしている優れもので、同じ日に見たSFもの(イギリスの監督作でズッコケちゃってます)とは好対照の英国映画。

 恐らく皇室がある日本以外でこの種の問題を理解するのは難しいであろう内容で、またエリザベス女王の心情を理解するのも我が国以外では難しいのでは。あのダイアナの死 が“マスコミ に醸成された世論VS守らねばならぬ伝統”という図式に塗り替えられ、単純にTVの見世物にされていたことがこの映画を見ると良く分かります。「トゥモロー・ワールド」しかり、「V・フォーヴェンデッタ」しかり、昨今の世界を描く上でイギリスと言う国は案外欠かせない要素を含んでいるのかもしれません。

 この映画ではもちろんTVが害悪であるとは描かれていません。けれど、エリザベス女王も首相のブレアも寝室でテレビを見ていて、あれよあれよという間に世論が動いていくことに驚き、その対応に追われていきます。結果正常であるはずの伝統が踏みにじられ、クレイジーな方向に一歩イギリスは踏み出してしまう。もちろん見方は色々でしょうけれど、冷静に見て一人の孫思いのお婆さんを、世間がよってたかって袋叩きにした事実はこの映画によって後世に伝えられることでしょう。

 TVによって過去のメディアに追いやられたはずの映画が、今では貴重な情報源となっていることは良いことなのか悪いことなのか。少なくとも現在の世界が確実に狂っていることだけは確か。そしてその現在を映し出すことに成功しているこの作品は紛れもないオススメの一本。ただのスキャンダラスなネタで迫る作品ではありません。

現在(4/19/2007)公開中
オススメ★★★★☆
THE QUEEN

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      プライドと偏見

                         

 もうホントに文学、文学、文学ですよ。でも格調高すぎない優れた映像化作品で、スルスル見ることができる。ジェームズ・アイヴォリィとは違った、繊細な情景描写は美しい。監督のジョー・ライトが出世していくのもうなづける。学生時代(英文科でした)読まずに授業に出て怒られて以来、英国文学には見向きもしていないけれど、年を取ると分かってくる。単純に“夢見る文学少女”が胸をときめかす内容に終始していないのは、やはりジェーン・オースティンならではといったところでしょうか。身分制度、男女差別などの時代背景はキチンと物語に組み込んでいる。

 原作未読だから偉そうな事は言えないけれど、エッセンスは十分抽出されていると思う。また出ている初々しい乙女たち(笑っちゃイヤよ)のこれが出世作になるだろうことは、もう見ている時から良く分かる。後に「わたしを離さないで」ではメインとなるキャリー・マリガンは殆ど画面の外にもかかわらず印象的だし、ジェーン役のロザンムド・パイクはやはり英国の売れっ子になり「17歳の肖像」に出世。また年配組も恐るべき豪華さで、悪い母親役が板についてきちゃったブレンダ・ブレッシン(「リトル・ヴォイス」)だけかと思いきや、ジュディ・デンチってもう重鎮的扱いなのね。彼女がいたから007を未だに観ているのに、コスプレに出てくると「恋に落ちたシェイクスピア」とか、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」でもなんだかよく分からないチラリ出演。そしてもちろん息子キーファーが乗り越えられないであろう父、ドナルド・サザーランドは、最後に映画を持っていってしまう(「再会の街で」もご同様)。ぜひご覧になってご確認ください。

 これを見ていると恋愛を成立させるためなら、“身分制度”を復活させても良いかもしれないと思う。あんまりイージーにくっついちゃうと、ありがたみが微塵も残っていない。文学の題材にもならなくなった21世紀は乱れ放題で、英国ですら「クィーン」をご覧になれば一発です。それにしても「路上のソリスト」「わたしを離さないで」を先に観て本作品を今更(2011年)とはまたしても後手に回った。
オススメ★★★★☆
 
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