めがね   9/25



 「かもめ食堂」監督、主演による最新作ということで、無条件で劇場へ直行。予想通りというか、案の定というかこの国ではあまり見られない佳作に出会うことに成功。この作品を観ていると他の映画がいにかも“ねばならない”に縛られていることが良く分かる。“気の効いたタイトル”、“物語”、“どんでん返し”“クライマックス”・・・。どれもこれもヒットするためになくてはならない仕掛け。ところがこの作品には物語があって無きが如し、クライマックスが在って無きが如し、タイトルはテキトーにつけたんじゃないかと思わせる。じゃあ何が在るのかと言えば、美し過ぎない自然の風景と、美味そうな食べ物、そしてビール。大抵この手のミニシアター系の作品が陥りがちな“効果的な美しい風景の挿入”もなくて実に爽快。

 全く見せ場に乏しいはずの映画なのに、何で最後まで惹きつけられてしまうのか、要因はたぶんこんな感じ。@主演小林聡美の美貌、A饗される料理があまりにも旨そうに映し出されること、B共演者それぞれが演技巧者で、むしろ彼らが料理の脇役に徹しているかのように見えることなど。デビュー作「転校生」以来年をとってないんじゃないかと思わせる小林聡美ちゃんは凄い。 フランスのイザベル・アジャーニも四十路間近のクセに、堂々と24!と言い放った作品(「かわいいだけじゃダメかしら」)がありましたけれど、加瀬亮が登場するまで(彼は後半登場)20代後半の設定でも十分通用するくらい。さすが本物の女優ですな。この人にはぜひフランシス・マクドーモンドのようになって頂きたいと願っておるのですが。
 
 前作「かもめ食堂」もそうでしたけれど、この作品でも映画の重要な位置を食べ物が占めています。バーベキュー、梅干、カキ氷といった食物に加えて今回はビールが何と言っても美味しそうに飲まれている。観ている最中から飲みたくてたまりませんでした。

 さてこの国では稀有な存在として位置する荻野直子 監督作品ですけれど、まったくこのような作品がなかったか、といえばそうでもありません。それが北野武 監督作品。一見暴力映画を前面に出しているようでも空間設計、間のとり方は実は絶品。それにこの作品に登場する二人乗り自転車のシーンは「キッズ・リターン」 を、砂浜に立つ小屋は「ソナチネ」 を思い出させます。大抵の映画が俳優やら爆発やらに心血を注ぐのに反し、それ以外の空間、食べ物、間、などに凝った作品はこの国では本当に貴重。ですからこの作品は一見のほほーんと見えますけれど、実に緻密な計算のうえに成り立っている作品といえなくもないのです。ま、そんなこと言っちゃったら野暮というもの。だって努力が見えたら映画としては身も蓋もないですもんね。

 あの何事も起こらないような前作「かもめ食堂」が実に賑やかに思えてしまうこの作品、素晴らしい。映画を観ている時間が休暇に思えてくるなんて滅多にないことです。

現在(9/25/2007)公開中
オススメ★★★★☆

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     転校生



 
後々“尾道三部作の第1作”と呼ばれることになる小林聡美ちゃん主演第1作。もうデビューした時からプロ根性発揮で、ヌードも披露(ま、ちっとも色気なんかないけれど)。男女が突然入れ替わっちゃうのがお話しのキモで、爆笑の連続。「あったー!!」、「ないっ!!」っていうセリフは特にね。ただ映画青年大林宣彦監督のセンスが冴えていて、ミニ・シアター系秀作(ATGっぽいっというのが当時の言い方)と見えるところもまたこの作品の特徴。
オススメ ★★★★☆

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