スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
1人を除いて出演者全員の英語がお粗末で、確かに設定もデタラメ。しかし欠点を挙げるならそんなところで、まず楽しめる邦画の超大作です。ここのところTVドラマの映画化か、感動作が主流になりつつある日本映画ですけれど、そんな流れに反する上出来の1本。巨匠黒澤明の「用心棒」を遠い祖先に持つ、スキヤキウェスタン。
出演者それぞれ個性発揮で、「キャシャーン」=伊勢谷雄介はその美貌全開で、実に悪役が良く似合う。彼と対立する親分役の佐藤浩市は今までに見たこともないような間抜け役で笑いを誘う。そしてキモは・・・ですけれどそれは見てのお楽しみ。
で、当たり前ですけれど出演者中ただ1人マトモな英語を話すクェンティン・タランティーノは爆笑独り占め。すき焼きの作り方がなってないと、ちゃぶ台をひっくり返すシーンはサイコー。彼が出演しているだけに「キル・ビルVol.1」 のパロディシーンもあったしね。もちろん笑いのシーンばかりではなく、撃ち合いのシーンはさすがVシネ根性監督の本領発揮。特に眉間を撃ちぬくトコは真骨頂ですな。共演者があまりにも個性的で、目立ちすぎているため、没個性主人公になりそうだった伊藤英明君も健闘です。だってアレだけ背が高くなくちゃ凄みは出ないですものね。
真面目にコト細かく見ていけば、いっぱいダメ出しできるかもしれません。けれど、この手のごった煮映画って、「パルプフィクション」 以来そんなに面白いものありませんから収穫です。世界中のB級アクションファンの好意的賛同を勝ち取ることでしょう。つまり面白けりゃあ何でも良いってワケ。
現在(9/17/2007)公開中
オススメ★★★☆☆
関連作
「伊賀忍法帖」の直後に見ると、画面の明るさが際立つ、ロミオとジュリエット忍者版。背景に伊賀と甲賀のデスマッチ五番勝負が繰り広げられ、悲恋の物語がメインテーマ。公開当時既にオッサンで、20代の子に勧められて見たら、出来が上々だったのに驚かされた。主題歌にJ-POPが起用されると、自動的にパスして損した典型。キャストは「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」に劣らず豪華で、主演の2人に加えて椎名桔平であるとか、幼い沢尻エリカであるとか、妖艶な黒谷友香であるとか。
妖怪変化が見ものの山田風太郎原作映画だけに、不死身の薬師寺天膳と毒を吹く陽炎の一戦はワクワクする。そして彼らを凌駕するのが伊賀と甲賀のリーダー。忍者というより、人ならざる必殺技はCGによって説得力ある描き方をされており、特に甲賀弦之助の方は「47RONIN」でもパクっていたような。衣装もCGも美麗ながら、浮き立つことなく日本の自然美と融合していると感じる。オダギリジョーも凛々しいが、身を呈して里を守りきる朧の美しさは、仲間由紀恵をおいて他にあるまい。
オススメ★★★★☆