4分間のピアニスト 11/22
ポスターのイメージとそのタイトルが恐ろしく魅惑的で、観たくて仕方なかったこの作品、予想を覆して素晴らしかったです。厳しいレッスンを積まなければ音楽家になるのは難しい。しかしその厳しさゆえに演奏する人々は例外なく不幸になる。どういうわけか音楽家を描いた作品を観ると、作曲家にしても(「アマデウス」「敬愛なるベートーヴェン」)、演奏家にしても(「シャイン」)あまり幸せとは言えない人生を送っています。一見みんながハッピーそうな感動作の「ミュージック・オブ・ハート」だって主人公は夫に逃げられた音楽教師ですから。
この作品でも、教える側、教わる側、双方癒し難い過去を持っている。生徒は女囚で殺人犯(実は違うのですけれど・・・)。その類稀なる才能を見抜く先生には秘密があって、なおかつナチの影が付きまとっている。ある年代のドイツ人には宿命的について回るナチの影。そんないわくつきの2人が刑務所の中で出会い、レッスンを重ねていく。物語は決して明るいものではない。さらに画面も粒子の粗いフイルムを使用しているのでしょうか、あまり美しいとは言えないもの。しかしこの作品の意図するところはまさにここで、料理が主役の「めがね」がそうであったように、人間ではなくむしろ主人公が奏でる“音楽”こそが観客に訴えてくる。
先生は「良い人間には出来ない」と断言し、厳しく主人公をしつけていく。まるで「奇跡の人」を見るよう。ただ最後に先生であるモニカが自分の過去を語り、
“才能がある人間は使命を果たすべきだ”というくだりは心を打ちます。またラストシーンは予定調和をアッサリと裏切り、余韻を残す素晴らしいものとなっていました。才能のある主人公はその使命を果たしたのか、それとも・・・。ぜひご覧になってお確かめください。胸に響き、心に残る1本、ミニシアター
の真骨頂です。
現在(11/22/2007)公開中
オススメ★★★★☆
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