それでも生きる子供たちへ      
              7/6


 「パリ・ジュテーム」「10ミニッツ・オールダー」と映画ファンが泣いて喜ぶ監督たちの競作オムニバスは“福袋”の楽しみが詰まっていてグー。そんな中でもこの作品はその題材において抜きん出ている。現在世界がどれほど悲惨な状況にあるかは皆さんご存知。訴える映画のなんと多いこと。

 今年に入っても「不都合な真実」「グァンタナモ僕たちが見た真実」「ブラッドダイヤモンド」などが環境問題、侵略戦争、先進国による搾取等々を描いてきました。そしてそんな中で犠牲になるのは子供たち・・・と相場は決まっていますけれど、どっこいこの作品はそれだけでは終わらない。むしろ悲惨と決めつけられている国々の子供たちの方がたくましく、生き生きとしている。

 エミール・クストリッツァ監督が描くジプシー少年のしぶとく、たくましく現実と向き合っている姿は本当に頼もしい。彼には酒瓶で殴りつける飲んだくれの親の元で盗みを働くか、少年院かの選択しかないのに、決して見ている者の涙を誘わない。カルティア・ルンド監督が描くブラジル、サンパウロで台車を引いて、空き缶を拾っている兄妹は本当に素晴らしい。その楽しげな姿に涙が止まらなかった。悲惨な状況に耐えているのではなく、本当に生を楽しんでいる姿には感激してしまいます。 これら悲惨と決めつけられている国々とは反対に、この世の地獄が繰り広げられるのがスパイク・リー監督が描くアメリカの子供。両親は麻薬中毒患者にしてエイズ患者。娘はHIV感染をしていて実は未来がない。さすがは冷静な目でモノを見ることの出来るインテリ監督(「10ミニッツ・オールダー」でも良かったしね)。

 映画は計らずも余計なものを映してしまいます。この作品は色々な国の子供たちを描いていますけれど、同時に彼らが暮らす国々をも捉えている。果たして今世紀、未来を約束されているのは“現在”繁栄を享受している我々か、悲惨と決めつけられている彼らか・・・。答えはハッキリしているのでホッとします。

現在(7/6/2007)公開中
オススメ★★★★☆

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 参考までに「裸足の1500マイル」「クジラの島の少女」はオススメ。どちらも健気だけでは終わらない生命力のある少女たちが主人公ですから。
 
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     裸足の1500マイル

                  
    
 物語は確かに「母をたずねて三千里」しているんですけれど、旅している少女たちのタフさがウェットになりがちなお話を引き締めてくれます。そして撮影が「英雄HERO」のクリストファー・ドイルで、オーストラリアの風景を美しく切り取ることに成功、素晴らしいです。オーストラリアの歴史、それも現実的な暗部に光を当てた佳作です。
オススメ★★★☆☆

裸足の1500マイル [DVD]

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