ブラッド・ダイヤモンド
4/11
「ラストサムライ」で日本人でもないのにアッサリと侍の映画を撮ってしまったエドワード・ズウィックが、新たに手掛けたのは“ダイヤモンド”と“アフリカ”。かつては“人種隔離政策=アパルト・ヘイト”をとる南アフリカ共和国を描いた作品が作られ、その実状を訴えてきました。「遠い夜明け」や今や見ることは出来ませんが「ワールド・アパート」などは意義深い作品。現在アパルト・ヘイトはなくなりましたけれど、先進国がかの地を食い物にしている現状には変わりはなくて、悲惨な現実は繰り返されている。最近のものでは「ナイロビの蜂」、「ホテルルワンダ」などでも描かれています。ただもっと突っ込んだ作品は何と言っても「ロード・オブ・ウォー」で、惨劇の元凶は一体何か、内戦の張本人とは一体誰かを追及している。
さて「ロード・オブ・ウォー」の主人公は武器商人でしたが、この作品でレオナルド・ディカプリオ(「アビエイター」)が扮する主人公は、武器の密売とダイヤモンドの密輸で甘い汁を吸う男。つまりは清廉潔白とは程遠い人物。しかし非常に興味深いのはこの人物が物語が進行し、最後に示す行動です。これは「トゥモロー・ワールド」(この作品が昨年のナンバー・ワンだと思います)に良く似ているのですけれど、利己的な人間にもかかわらず、ついにしてしまうある行為です。それはぜひご覧になって確かめてみてください。
ではただ悲惨な世界の現実を訴える感動作か、と言えば実はその枠に収まりきらないスケールがこの作品をワン・ランク上のドラマにしています。それはジェニファー・コネリーが真面目な役にもかかわらず、美しく描かれていることでも証明されている。ただ現状を訴えるだけでなく、観る者を引き込むために様々な要素が盛り込まれていて、決して手抜きの部分がない。戦闘シーン一つとっても「ブラックホーク・ダウン」顔負けだし、アフリカの夕陽は圧倒的に美しい。娯楽作としても成立しうる要素がふんだんに盛り込まれていて、飽きることなく2時間半が過ぎます。
ただ無駄に長いセリフでメッセージを述べたりせずに、映像の力を十二分に使いこなし、言うべきところはハッキリと伝える。ディカプリオが本気で臨むのも良く分かります。また「コンスタンティン」でも上手いなぁと思いましたけれど、ジャイモン・フンスーって凄い役者ですね。むしろ彼がこの作品の主人公と言っても差し支えないくらいですから。役者も監督も取り組むべくして参加し、力量を発揮したこの作品、「トゥモロー・ワールド」同様にもはや“人類”に向けての映画なのでしょう、本当に素晴らしい。願わくば先進国が滅びた後に、かの地が楽園になることを祈るのみですね。
現在(4/11/2007)公開中
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