硫黄島からの手紙   12/13


 「父親たちの星条旗」に続く硫黄島2部作の第2弾、まさかここまでの完成度とは思いもよりませんでした。だってどこをとっても日本映画にしか見えないのですから。

 ここ数年、肝心なこの国の実情を描いた作品は殆どが外国産。「力道山」は韓国製、「太陽」はロシア製、「めぐみ引き裂かれた家族」はアメリカ製。とにかく「ラストサムライ」から始まり止まるところを知らないこの流れ、何とかならないものかと嘆かわしい。「ラストサムライ」がそうであったように、出演者は本当に活き活きと芝居をしている。言語的な弊害などなかったかのよう。まるで自然な演技が引き出され、過酷な最前線の模様がありありと描き出されている。

 特に全員が徴兵されたといっても良いような状況下であるから、ここの兵士たちが語る事情は、実は我々の祖父母達が語っていたことと全く同じで実に腹立たしい。国家によって国民の人権が踏みにじられていた時代が思い起こされて、戦争がいかに非人道的かが改めて問われている。一兵士を演じた“嵐”の二宮和也君は素晴らしいです。パン屋だったのに商売道具を取上げられて、徴兵されて、最前線に送り込まれて・・・、とこういった描き方をする日本映画は最近耐えて久しいですね。六十年前の反省なんて忘れちゃったんでしょうか。

 現在(2006年)この国は言論の統制化にあって、“非国民”という言葉すら映画の中では失われている。状況は変わっていないどころか、逆戻りをしてまた同じ過ちを繰り返そうとしているのが一目瞭然。こんなことを外国の映画監督から伝えられて日本映画の関係者は恥ずかしくないのか。

 あぁ文句ばっかりになってしまいますけれど本当に情けない。そして忌々しいばかりに正確な日本の描写は驚嘆の域ですな。クリント・イーストウッド という監督は、実は一貫してアメリカ映画を撮ってきた監督。その男が敢えて外国を描く時にこの国を選んだのは実に納得のいく選択。そして決していわゆる紋切り型の日本を描かずに、正確な描写に務めたのはいくら賞賛しても足りないくらいです。恐らく来年のアカデミー賞 ノミネートは間違いないし、獲得する確率も非常に高い。でももし獲ってしまったら、この国の映画関係者はさぞや恥をかくことになるでしょう。
 
現在(12/13/2006)公開中
オススメ★★★★☆
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       絆-きずな-

  
 日本映画の2本柱、役所広司と渡辺謙が真正面からぶつかるハードボイルドなヤクザ映画。1998年の作品で、今(2011年)や並んで立つところすら拝めない2人の共演だけになかなかに見応えあり。とは言ってもあんまりその辺のレンタル屋には置いてなくて、恥ずかしながら、ビデオの時代に既にリリースされていながら見ていなかった(気にはなっていたんだけど・・・)。なぜかというと北野武が出現してしまったので、裏社会を美化したような描き方の作品を敬遠していた。ところが我が国の2本柱はこの時期確実にカッコ良いし、題材がまたしびれるものなので画面に映える。

 「タンポポ」に一緒に出てはいたけれど、別々に映ってたし若くて生々し過ぎた。しかし年を重ねると2人ともダンディで、方や過去を背負った実際的なヤクザ、方や泥臭い刑事。バブルが去った後だけに、衣装もそれほどチャラチャラした感じはないので古臭くありません。「永遠の1/2」(頼むからリリースして頂戴)が好きだった根岸吉太郎監督、スタイリッシュな映像は独特で、「眠らない街−新宿鮫−」は一歩譲ってしまう。また「マークスの山」ほど警察内部にお話を突っ込んでいないので、泥臭い刑事役の渡辺謙もダンディなたたずまいを貫けます。タイトルの絆が意味するのは、家族を持たない人々の“家族の絆”、ぜひご覧になってご確認ください。この作品みたいに原作がしっかりした小説を、静かなトーンを貫いてスタイリッシュに映像化できないものでしょうか?また見逃しの秀作にはどういうわけか鳴り響いてしまうチャイコフスキー(「オーケストラ!」「北京ヴァイオリン」も)、演奏するのが本物で川井郁子。もちろん彼女が物語のキーパーソン。
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