ホテル・ルワンダ       
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 10年近く前に大学入試を経験したことのある方なら、覚えなければならない項目の中にこんな件があったはずです。「ルワンダで大量の難民が発生、ツチ族とフツ族の争いがその原因である」。当時のニュースもその程度の扱いでした。しかし難民が発生する前に100万人が惨殺されて、国連が見放したという事実はこの作品に接するまで知らなかった方も多いはず。

 通常こういった内戦を扱った作品ですと主人公はジャーナリストであることが多い。カンボジアの地獄を描いた「キリングフィールド」 、エルサルバドルでの内戦を描いた「サルバドール」。ボスニア・ヘルツェゴビナでの内戦を描いた「ウェルカム・トゥ・サラエボ」。いずれも優れた作品ばかりでオススメなのですけれど、あくまで主人公がジャーナリストなので、当事者ではありません。

 しかしこの作品の主人公ポール・ルセサバギナ氏はフツ族でホテルの支配人。つまりは当事者なのです。彼が実際に体験した恐ろしい出来事、そして真に勇気ある行動は本当に人々の胸を打つ。あのユダヤ人を救ったオスカー・シンドラー に例えられるくらい彼もこの世の地獄を目の当たりにします。そしてその主人公に扮したドン・チードルが素晴らしい。「青いドレスの女」以来彼のファンなので嬉しくて堪りませんでしたね。もちろん彼だけではなく、ニック・ノルティが苦悩の国連軍大佐を演じているのは様になっていました。ジャーナリストに扮したホアキン・フェニックス「戦争のはじめかた」「炎のメモリアル」)も良いですね。通常の映画であれば彼が主人公になるケースが多いのに、敢えて少ないけれど肝心なセリフだけを残して去っていく。クレジットはされていませんけれど、ジャン・レノ(「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」)だって出ている。彼はなかなかに美味しくてカッコよい場面をさらっていきます。

 それぞれ演技力のある役者達が、真剣にこの作品に参加していることが見ているとひしひしと伝わってくる。それだけ意義ある作品だし、映画の機能の一つ、後世まで伝え、残すを実現している一品と言えます。そして関連作としてぜひニコラス・ケイジ の主演作「ロード・オブ・ウォー」をご覧になることをオススメします。今まで映画は起こった事象を描いて、感動だけでなく人々に事実を伝えてきました。しかし更に踏み込んで原因がどこにあるかを暴露したのはかの作品です。だってアフリカで機関銃を生産したりしていませんもの。悲劇を加速させているのは他ならぬ×××でありますから。ますます利己的になりつつある現代において、本物の勇気を示した男の物語必見です。

現在(1/20/2006)公開中
オススメ★★★★☆

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    サルバドル 遥かなる日々

               
  ノーム・チョムスキー教授
によると、“南米に対する合衆国のテロ行為”は後を絶たないのだそうで、この作品も実際にあった事件を元に、オリバー・ストーンが描いた彼の初期傑作。エル・サルバドルの政変を取材するジャーナリストが主人公で、扮するのはジェームズ・ウッズとなかなかに通向けのキャスティングで、内容はかなり深刻。
オススメ★★★★☆

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